リスキリングが求められる時代的背景とは

これまでのスキルだけでなく、新たなスキルが求められている時代、そもそもなぜリスキリングが話題となり、求められるのでしょうか?今回はリスキリングが求められる時代的な背景について、きっかけとなったダボス会議やリスキリングが必要となるDX技術について解説しましょう。

きっかけは2020年のダボス会議

リスキリングというキーワードがクローズアップされたきっかけは、2020年に開催されたダボス会議で、「リスキリング革命」が主要な課題に上がったからです。ダボス会議とは1971年からスタートしたスイス東部にあるダボス・クロスターズで毎年1月に行われる会議で世界経済フォーラム(WEF)の年次総会です。

過去にも世界的に大きな影響を及ぼした会議です。例えば、1990年に行われた会議では、当時東西に分かれていたドイツの議員やビジネス界のリーダーが一体となって東ドイツの通貨安定化のプログラムの実施を要求し、その結果同じ年の10月にドイツが統一されました。また1998年の会議ではこれまでG8だったものが、会議の議題として上がったことがきっかけでG20に拡充したのです。

そのくらい世界的な影響力のある会議で、2020年は50回目の年次総会として、株主の利益だけを対象にせず、企業のあらゆる利害関係者であるステークホルダーを対象にした資本主義に重点を置くことが求められました。具体的にはSDGs(持続的可能な開発目標)と国連気候変動枠組み条約(パリ協定)に向けた支援による結束した世界が議論されました。その取り組みの中にリスキリング革命についての提唱がありました。具体的に2030年までに世界10億人のスキルを向上させるという内容です。

IT・デジタル化による産業構造の変化が後押し

世界会議で叫ばれるほどリスキリングが必要になった背景には、IT・デジタル化による産業構造の変化がありました。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性があげられます。DXとは組織や企業がデジタル技術を活用して業務のプロセスやビジネスモデルを変革し競争力を高める取り組みのことです。

これまでは機械化、効率化、自動化という3つの産業革命がありましたが、4つ目の産業革命として最適化があげられています。

最適化を実現するには大量の情報をデジタル化やAIを駆使しながら自ら考えて最適な行動をとる必要があります。その結果潜在的なニーズの掘り起こしや新しいイノベーションの創出が可能となり、組織や企業にとって有益でかつ他の組織との差別化が図られます。

そのような高度なスキルを持つ人材が今後求められており、そのためにリスキリングが重要な意味を持つことになります。そのため、政府、経済産業省も各企業・組織に対してリスキリングを推進するための後押しを行っています。